記憶4

Concept & Series

色褪せて曖味な記憶の中の風景を独特なタッチや色彩で再構築した明るい世界を描いている。 人は、精神的そして身体的に経験および体験したものを過去の思い出として記憶している。 そして、人は「未来」と言った前に向かって、「現在」を生きていますが、記憶した様々な「過去」の思い出と共に生きている。 また、その思い出なくしては生きていくことは困難であり、人が生きていく過程において「過去」は重要な要素であると考えます。 その記憶は、辛く苦く困難なことや悪かった結果の方が強く残る傾向がある反面、自己防衛の側面から美化してしまうこともあり、 現実・理想・空想・希望・絶望などが様々な感情が入り混じり、その境界線は曖昧です。 人によっては、「過去を振り返るな」、「過去なんて忘れろ」、「前（未来）だけ見ていろ」と言う言葉もありますが、 人が、過去に拘るのは、良かったことも、悪かったことも含めて過去があるから今現在にここに存在しているので、 その過去の経験や体験を元に、より良い未来へ向けた様々な選択を行っていることから、未来に向かって生きていくうえで、自ら歩んできたその経験や体験、つまり、どの様な「過去」であったとしてもそれには価値があります。 また、その過去の記憶は、思い、環境などにより、自分の都合でその時々に常に変化したり、させたりすることも可能なため、今後の素晴らしい未来を切り開いていくためにも、少しでも過去を意味のあるもの、価値のあるものであったと都合よく解釈していくことも大事です。 そんな様々な過去に対する執着を内包させ、そこに「過去」の美化、「現在」の理想、「未来」への希望などの新しさを加えてrestructure(再構築)することで、「今後の自分次第で過去の意味や価値を変えることができる」というメッセージを込めています。 制作している作品は、過去の記憶を元に、どこか懐かしい日本の原風景をベースにしながらも、そこにいるはずの無いもの、あるはずが無いもの、存在しない色遣い、また描いているものの尺図を変えることで、実際には存在しない世界感や未来感などを兼ね備えた過去から現在、そして現在から未来へと連なる理想郷を描いています。 絵を見た方々が自分の記憶と重ねて見ることで過去を振り返ることで、自身の現在の理想を思い巡らせて、未来への新たな希望を抱けていただける一助になれればと思っています。 唯一無二の色彩感覚と絵の具などの描画材の特性を活かした描き味にも注目していただきたい。田舎の風景をモチーフとして選んでいる理由は、懐かしさや過去の記憶への執着があるからです。時代が進むにつれて段々と森林や瓦のある屋根、ローカル線などが消滅していくことに寂しさを感じており、今のうちにそれらを描いて消えゆくもの(過去)を絵に閉じ込め残したいという思いがあるからです。また、道を主張した構図を取っていますが、人や車、動物が通った道はアスファルトではなくほとんど土にし、踏んで刻まれ「過去にそこにいた」という残された跡に時を表しています。 　平和、幸福を含んだ新たな世界を構築させるといった意図で、田舎の風景に気球や動物などといったそこにいては不自然と感じられる物を加えています。また、気球は時を運ぶ役割であると考えており、「過去」から「(良い)未来へ」進んでほしいという未来への希望を込めています。